May 15, 2020 - stories

外出規制から2ヶ月、最近のマドリード

3月15日の緊急事態宣言から早2ヶ月。5月4日に、今後外出制限解除に向けて段階的に規制が緩くなる計画が発表された。少しずつ外出ができるようになってきたマドリードでは、まだ人通りは少なくても市民の陽気さを街の至る所に感じることができる。

いつの間にか、春を通り過ぎて初夏になっていた。銀木犀の香りに圧倒される。

マドリードでは緊急事態宣言が出された3月中旬から、毎日夜20時になると住民がバルコニー に出てきて拍手を始める。医療従事者やエッセンシャルワーカーに感謝を伝えるためだ。最初の日は22時だったが、子供も参加できるように次の日から20時になった。2ヶ月経った今でも、毎日バルコニー に立つ。外出ができなかった間、これが唯一の家族じゃない人との交流だった。毎日顔を合わせるので、自然と挨拶をするようになり、名前を教えあったりする。引っ越してきた時にアパートの両隣くらいは挨拶はしたものの、道を挟んだ隣の家の住人など顔も知らなかったが、今では住んでる道のどのアパートにどのような人が住んでいるのか大体わかるようになった。きっとひと昔前だったらこういうご近所付き合いは当たり前のことだったのだろう。それがまたこのような形でできるようになったのは嬉しい。

バルコニー はいつしか、外の世界とコミュニケーションをとる扉となっていた。

規制が緩くなり散歩ができるようになったので、スーパーよりも遠出してみると、近所の道ではお向かいさん同士でバルコニー を使い、お祭りのように飾り付けをしていた。これも20時の拍手をしている間に、何か楽しいことをしようという話になり、家にあったはぎれや紙で飾りを作り、相手のバルコニーに吊り下げてもらったようだ。先週の散歩では道を挟んで買い物袋を吊り下げてるところを見つけ、お向かいさんと物々交換できるようにしてあった。何を交換しているのか気になるところ。

まるでお祭りの時のような賑やかな道。

二重のラインは動かせるようになっていて、お向かいさんと物々交換できる。

散歩ができるようになったマドリードでは、みんなウキウキと、でもちょっと不安も持ちながら長い冬眠から覚めたかのように少しずつ外に出てくる。今は時間により外出できる年齢層が決められており、20時以降、大人の散歩タイムになると、まだ車はほとんどない道を、ジョギングしたり自転車で走ったりする人、歩道をゆっくりと散歩する人、ジムはまだ開いていないのでその辺の手すりで筋トレする人など、それぞれが太陽の下での時間を楽しんでいる。このゆっくりとした空気、普段のマドリードではなかなか感じられないものだ。

まだこれからだけど、今まで本当に大変だったけど、少しずつ希望が見えてきている。街も、少しずつ目覚めてきている。