カタルーニャの新春の旬、Calçotsを食す
九条ネギや下仁田ネギ、日本にも色々なご当地ネギがあるが、Calçots(カルソッツ)はまさにスペインのご当地ネギだ。カタルーニャ地方、タラゴナで栽培されるこのネギは、細めの下仁田ネギのような、甘くてちゅるりとした食感が特徴だ。
1月半ばに旬を迎えるこのネギ、マドリードでも市場に並ぶ。1束の重さ実に2kg。二人暮らしにはなかなかハードルの高い量である(それでも買う)。
このネギの本当においしい食べ方は、炭火でこげこげに焼いて、黒い部分を剥き、中の蒸し焼きになっている白い部分をロメスコソースにたっぷりとつけて食べるもの。栽培している地域では、この時期Calçots祭りと称してバーベキュー大会が行われる。今年はもちろん祭りもなければ、いまだに自分の市外には出られないので、マドリード市内のバルで味わいに行った。
炭火焼のタパスを売りにしているバル、El Economatoでは、この時期Calçotsも出している。注文して、赤ワインのグラスを傾けながら待っていると、炭にあぶられたネギの香りがしてくる。まず渡されたのは、ネギのゆるキャラのイラストが可愛らしいエプロン。“Estoy en mi salsa!” (私のソースに浸かっています!)と叫んでいるイラストはなかなかインパクトがある。
Calçotsの正しい食べ方は、ソースにつけたネギを天高く持ち上げ、、上をむいて大きく口を開けて食べるため、エプロンをくれたらしい。不慣れな私たちがエプロンに戸惑っている間に、こげこげのネギが赤煉瓦色の瓦に紙をひいたものに乗って運ばれてきた。そんな私たちに気づいて店主が一つ見本にむいてくれた。
焦げを綺麗に取り除くと現れるジューシーな白いネギ。赤いロメスコソースにひたし、一口でかぶりつく。う、うまい。ただのネギなのにうますぎる。ロメスコソースのトマトの酸味、アーモンドの甘みと香ばしさ、ネギの甘みと辛みに素晴らしくマッチしている。そこで赤ワインを一口飲むと、またその香ばしさを引き立てる。大量のネギ、あっという間になくなってしまった。これはまだ肌寒いころ、外で焚き火の煙を浴びながら、ネギをワインと味わいながら、ソーセージを焼いて食べるのがうまいんだろうなぁ。地域を超えて移動できるようになったらいつか本場に行ってみたい。
さて、市場で買ってきた大量のCalçots、赤土も緑の葉っぱもたっぷりついたもの。下仁田ネギは長く保存できると聞いていたので、きっとこのネギも環境を整えれば大丈夫。乾燥した直射日光の当たらない場所で、立てて保存することにした。日本でよく下仁田ネギを使って作っていたネギのオイル煮はCalçotsでも美味しくできた。トーストしたパンにのせるだけで手軽な前菜ができる。
家で炭火を起こすのは難しいけど、オーブンを使ってあのバルの味を再現してみた。ロメスコソースも案外簡単に作れたので、日本にいる皆さんは下仁田ネギでぜひ!
カルソッツのオーブン焼き(二人分)
Calçots(or 下仁田ネギ)8本
ロメスコソース:
トマト 1個
ニンニク 2片
ニョラ唐辛子(乾燥)* 1個
アーモンドパウダー 30g
パン(トースト) 1/2枚
オリーブオイル 50ml
白ワインビネガー 20ml
パプリカパウダー 小さじ1
カイエンペッパー 少々
塩 少々
*ニョラはスペインでよく使われる丸い形の辛くない唐辛子。手に入らない場合はパプリカパウダーを倍量入れる。
ロメスコソースを作る。ニョラ唐辛子は一晩水につけて戻し、内側の身の部分をスプーンで削る。トマトとニンニクをまるのまま耐熱皿にのせ、200℃に予熱したオーブン(または魚焼きグリル)で15分加熱する。トマトとニンニクは皮をむき、全ての材料をバーミキサーで均一になるまで混ぜる。味をみて、塩、ビネガー、カイエンペッパー(辛くしたい場合)を調節する。
ネギは根の部分と一番外の皮を取り除いておく。予熱された魚焼きグリルに並べ、軽くオリーブオイルを塗り強火で15分ほど(オーブンなら200℃に予熱されたところに15分)焼く。黒こげにならなくても柔らかくなれば美味しくいただける。
焼けたら、一番外の皮をむき、ネギの白い部分をロメスコソースにつけ、天井にむけて大きく口を開けていただく。
これだけネギを食べると元気でいられるような気がする。この冬もこれで乗り切ろう。
Calçotsの旬は1月中旬から3月ごろまで。この時期ならカタルーニャだけでなく、首都マドリードでも楽しめます。El Economatoをはじめ、色々なバルやレストランでも味わえるので探してみて。
El Economato: Calle Belen 5, Madrid